吸血鬼ドラキュラの弱点はニンニクと十字架だったが、東欧アルバニアに伝わる、女の吸血鬼の弱点はちょっと変わっている。豚の骨で作った十字架と血に浸した銀貨だそうだ。この吸血鬼、名をシュトライガという▼伝説によると蛾(が)や蠅(はえ)に変身して村人の血を吸う。生まれついての吸血鬼ではない。子どもをなくして邪悪な心を持つようになったと聞けば、気の毒な身の上でもある。ルーマニアではストリゴイ。英語名はストライガである▼アフリカの人々を苦しめる雑草にその名がついているのはトウモロコシなどの作物に寄生し、養分や水分を奪い、枯らしてしまうためだろう。憎き吸血鬼もこれまでか。名古屋大学の研究チームがこのほどストライガ退治の新薬開発に成功したという▼写真で見れば、ピンク色の花がなかなか愛らしいが、除草剤も効かぬ強敵。アフリカを中心に年間一兆円規模の被害をもたらしている▼開発した新薬は吸血鬼をあざむくのだそうだ。ストライガは寄生する作物がないとやがて枯死する。新薬の効果で作物がないのに発芽を促し、四日程度で枯れさせる▼新薬が安価なこともアフリカの人々をほっとさせるだろう。一グラム四十円程度で製造でき、その量があれば一ヘクタールほどの面積に効果がある。吸血鬼を撃退し、アフリカの食糧問題に力を貸す日本発の十字架と銀貨。効果を早くアフリカで見たい。