ハナ肇とクレージーキャッツの「ドント節」(作詞・青島幸男、作曲・萩原哲晶)がヒットしたのは、高度成長期の真っただ中の一九六一(昭和三十六)年。<サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ>。植木等さんの底抜けに明るく、どこか人を食った歌声が懐かしい▼サラリーマンが気楽な稼業である理由について、その歌はこう説いている。たとえ、二日酔いでも寝ぼけていてもタイムレコーダーさえ<ガチャンと押せばどうにか格好がつくものさ>であり、<チョックラチョイとパアにはなりゃしねえ>▼もちろん、それぐらいの気持ちで気楽におやんなさいという歌なのだが、どうやらタイムレコーダー、ガチャンではもはや格好がつかない時代へと向かっていきそうな気配である。働き方改革関連法が成立した▼残業に上限規制が設けられる一方で高収入の一部専門職に限って、労働時間規制や残業代支払いの対象外とする「高度プロフェッショナル制度」が明記されている▼労働時間ではなく、事実上、仕事の成果に対し賃金が支払われる。何となく時間が自由に使えるようにも聞こえてしまうが、真面目な日本人のこと、成果を追い求めて、タイムレコーダーも残業代もなしに働かされ続けることにならぬか。心配が残る▼将来的に対象拡大の危険もある。<気楽な稼業>が、どうも<気鬱(きうつ)な苦行>と聞こえてならぬ。