これは度を超えている。心の中でそう繰り返してしまう。連日の暑さである。頭の上からあぶられ、照り返しにやられ、ビルの影に身を寄せても、熱い風があおってくる。一瞬、逃げ場を見失う。こんな暑さが、子どもを含め多くの命を奪っていると気付く▼列島のいたる所で、昨日も気温が三五度を軽く超えた。京都では四〇度に迫った。辞書によると、「度」は温度の単位であるとともに、物事の適当な程合いという意味がある。どちらの度も超えるような暑さではないか▼猛暑の中で、今日は土用の丑(うし)である。水分の補給にばかり気を取られる日常が続く中で、ウナギで滋養を得ることに目先を向けてみる時か。ただ、今年も不漁の影響が消えないようだ。スーパーで元気なのは代用のかば焼きで、中には魚でないのもある▼稚魚がとれなくなっているのが価格の高騰の背景にあるという。気が付けば、かつてごちそうだったものを大量消費するようになっている。われわれの食の変化がこの事態の根底にある▼大衆魚では、サンマも近年は不振続きだ。こちらは外国の漁船による公海での先取りが、理由に挙がる。国際的な管理の話し合いが不調に終わったばかりだ。外国人の食習慣も漁業もまた大きく変わっているようだ▼天候しかり。急変はありがたくない。適度が重要だ。かば焼きの抗しがたい香りを想像し、そう思う。