「大群獣ネズラ」は、東宝の「ゴジラ」の人気に対抗して当時の大映が企画した怪獣映画。一九六三(昭和三十八)年というから大映のヒット映画「ガメラ」より前の話である。主役は巨大化したネズミの大群。鳥の群れが人を襲うヒチコックの「鳥」がヒントになったらしい▼こんな逸話が残っている。撮影のため、たくさんのネズミが必要となり、一匹五十円で買い取るという広告を打った。当時の五十円なら、ちょっとしたおこづかいだろう▼狙い通り、大量のネズミが撮影所に集められたが、問題が起きた。ネズミからダニが発生。撮影どころではなくなり、企画自体がボツになったそうだ▼場合によっては「シン・ネズラ」が撮影できるか-と愚かなことも言っていられぬ最近のネズミ問題である。豊洲市場への移転で閉場迫る築地市場。移転後に建物の取り壊しが始まれば、すみかを失ったネズミが周辺に逃げだす危険があるらしい▼ネズミには「楽園」だったにちがいない。なにせ魚や野菜など食べ物には事欠かぬ。古い建物はさぞや居心地が良かっただろう。五月と八月の駆除で千四百匹を超えるドブネズミやクマネズミを退治したそうだが、いったい、どれぐらいのネズミが今もいるのやら▼築地から一斉に走りだすネズミを想像するだけで身震いする。都の封じ込め大作戦を「チュウ(注)視」するしかないか。