敗戦後、進駐軍の接収などを受けて、建物や公園の名称が日本名ではなく英語名に一時的に変わった。かつての東京宝塚劇場は米従軍記者の名から「アーニー・パイル」。横浜公園球場はヤンキースの強打者にちなみ「ルー・ゲーリッグ・メモリアル・スタジアム」である▼日比谷公園も名を変えた。「ドーリットル・フィールド」。その名は一九四二(昭和十七)年四月、日本本土に対する最初の空襲を指揮したジミー・ドーリットルから取った。当時の日本人には複雑だっただろう▼進駐軍の指示でもあるまいに駅名に分かりにくい片仮名が入るのが腑(ふ)に落ちぬ。JR東日本は山手線の田町-品川間に建設中の新駅名を「高輪ゲートウェイ」にすると発表した▼和名でなければ、まかりならぬとは言わないが、片仮名がいかにも気取って聞こえ、愛着がわきにくい。試しにその名を口に出してみる。長ったらしく、待ち合わせ場所を田町に変更したくなる▼ゲートウェイにはかつての江戸の玄関口だったことや東京の将来の交通拠点にという意味を込めているそうだが、駅名にするには無理があろう。国電という言い方を「E電」に改めようとして定着しなかった、かつてのキャンペーンを思い出す▼おそらく、利用者はそのままの駅名では使うまい。短く「高輪」。あるいは若者風に「高ゲー」「輪(なわ)ゲー」か。まだ親近感がわく。