二〇一九年元日。謹んで御慶(ぎょけい)申し上げる。年初はおめでたい話題で書きだすことにする▼年越しそばに門松、獅子舞。日本の正月の伝統的な習慣だが、よその国の方が見れば、さぞや不思議に思えるだろう。なぜ、そばを? 逆に他の国の新年の風景が日本人には奇妙に映るということもあるだろう▼新年の願いを紙に書いて燃やす。残った灰をシャンパンに入れ、年が変わる直前に飲み干す。これはロシアだそうだ。あまり、おいしそうではない。なぜ、それを?▼デンマークのはもっとハラハラするか。まず椅子の上に立つ。年が明けるその瞬間、えいやとジャンプする。魔よけの効果があるそうだ。エストニアでは新年に十二皿の料理を用意するそうだ。十二人の仲間から力を借りられるためだとか。ブラジルでは大みそかにやはり魔よけで、白い服を着ると聞く▼面白い。国が違えば新年をことほぐ習慣も方法も違うが、いずれにも長生き、健康、無事、幸せという人の素朴な願いがこめられているのだろう。人類共通の「生きたい」という願い。人はみな同じである▼谷川俊太郎さんの「生きる」という詩が浮かぶ。<生きているということ/いま生きているということ/泣けるということ/笑えるということ/怒れるということ/自由ということ>。生きている喜びと生きたいという祈りが新年の地球上にあふれている。

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