2017年7月6日
「東海道中膝栗毛」の十返舎一九の辞世は<此世(このよ)をばどりやおいとまに線香の煙とともに灰左様なら>。線香の灰とのシャレでハイ、サヨウナラ。さっぱりしたものである▼名将は最期になんとおっしゃったか。勝負にかけた熱とこだ […]
2017年7月3日
物語の展開に困った作家がこんな方法を思い付いた。丸い紙に物語上、起こりえる出来事をたくさん書き込んでおく。たとえば、「予期せぬ来訪者」「ヒロインの愛の告白」「身内の裏切り」…。それをルーレットのように回し、止まった内容に […]
2017年7月2日
【不良】…「質・状態がよくないこと。また、そのさま」。「品行・性質がよくないこと。また、その人」。字引は実にさっぱりとしたものである▼されど、その人は【不良】の中に字引では説明されぬ価値を見ていたのか。不良と呼ばれること […]
2017年7月1日
重く受け止めごっこ」が流行したら、どうなるだろうか。思想家の故・鶴見俊輔さんが十年ほど前、そんなことを話していた▼この国では不祥事の類いが起きると、大臣から官僚、経営者から教育者まで判で押したように「このことを重く受け止 […]
2017年6月30日
二十七日に九十一歳で逝った英国の作家マイケル・ボンドさんが、そのクマに出会ったのは一九五六年のクリスマスイブのことだった▼家路を急ぐ彼の目に、売れ残って店先にぽつんと置かれたクマのぬいぐるみが、飛び込んできた。見捨てられ […]
2017年6月28日
<記録に並ぶは七月一日。そこからさらに十二試合、驚き桃の木の大選手>。「ジョルティン・ジョー・ディマジオ」(レス・ブラウン楽団)は一九四一年、全米で大ヒットした。陽気で軽快な曲を訳してみれば、こんな雰囲気だろう▼歌の主人 […]
2017年6月27日
ある会社の社長がこんなことを言った。「わが社の製品が使用されないことを望む」▼使われてナンボ、売れてナンボの経営者が自社製品を使ってくれるなとは。ナゾナゾの問題ならば、その社長、武器商人か何かなのだろうが、その会社は実在 […]
2017年6月26日
苦しみもだえる男になおも鞭(むち)をふるう。「どうだ、もうちょっといけそうか」。聞いているのは車の御者。この車は人間の苦痛で発電し動く。ときどき、神経が麻痺(まひ)して痛みを感じなくなってしまい、動かなくなる。劇作家ケラ […]
2017年6月25日
「天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした」。若者とは坂本龍馬。司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』の最終回。近江屋で龍馬が刃(やいば)にたおれる場面で […]
2017年6月24日
「政治家は、曲芸師である」と喝破したのは、十九世紀から二十世紀にかけてフランスの政界と文壇で活躍したモーリス・バレスである。「政治家は、実際にやることとは逆のことを言って、バランスをとるのだ」▼わが国の首相も、この手の曲 […]