2018年9月25日
作家、演出家の久世光彦(くぜてるひこ)さんが「町の音」というエッセーの中で好きな町の音を一つだけあげろと言われたら「私は躊躇(ちゅうちょ)なく、この音と答える」と書いている。「夕食の支度をする音」だそうだ▼水を使う音、 […]
2018年9月23日
教室の中で何かがなくなったとする。誰かが取ったにちがいない。先生が命じる。よし、みんな目をつぶれ。心当たりのある者は手を挙げなさい▼書いていてあまりいい気分がしないが、子どもの時、こういう居心地の悪い場面に出くわしたこ […]
2018年9月22日
<猪牙(ちょき)で行くのは深川通い>-。江戸文政期に流行した端唄の「深川」。三下がりのオツな三味線が聞こえる。猪牙とは猪牙舟を詰めた言い方で屋根なしの小型舟のことである▼神田川の柳橋あたりから吉原遊郭へ向かう猪牙舟が出て […]
2018年9月20日
敗戦が迫っていたころ、ちまたに多くの流言、デマが乱れ飛んでいたという。「北アルプスに建設中の地下要塞で敵を迎え撃ち、撃滅する」「強力なロケット弾が完成すれば、ニューヨークも火の海になる」「最強の関東軍が無傷だ。本土決戦 […]
2018年9月19日
かわらけ投げとは高いところから素焼きの小皿などを的に向かって投げる遊びで今でもできるところがあるだろう▼落語の「愛宕山」の中にお大尽の旦那がかわらけの代わりに小判を投げる場面がある。この旦那、遊びを極めたいのか「いっぺ […]
2018年9月18日
人類はどこまでマラソンの記録を短縮できるかという研究がある。カナダの研究者によると代謝能力や有酸素運動の持続能力、記録更新のペースを考えれば、二〇二八年に二時間を切り、四〇年には一時間五十七分十八秒まで短縮できるのではな […]
2018年9月17日
顔を売る映画女優なら、自分の顔を大写しにしてもらいたいものである。大物女優二人が共演すればアップの場面の数を意地をかけて競い合う。よく聞く話である▼その女優はアップを求めなかったそうだ。亡くなった樹木希林さんである。タッ […]
2018年9月16日
蚊を自分の腕にとまらせて、血を吸わせてみる。普通の蚊であれば、かゆみが残るぐらいですむ。が、これが黄熱病患者の血を吸った蚊だったとしたらどうか。考えただけでおっかない実験を一九〇〇年九月、米国の医師ジェシー・ラジアが行 […]
2018年9月15日
作詞家の阿久悠さんは、自らの作品にこんな思いを持っていた。<何十年かたった後に、時代を思い出す最初の扉が歌であればいい>。テレビの番組で語っている。世の中にとって歌とは何かという問いへの一つの答えでもあるだろう▼その言 […]
2018年9月14日
名せりふに富んだセルバンテスの『ドン・キホーテ』に従者のサンチョ・パンサが持ち出すことわざがある。<付き合う相手でお前が分かる…誰の子かにあらず、誰と同じ釜の飯を食っているか、それが問題だ>(新潮社、荻内勝之(おぎうち […]