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 八歳の少年がトロッコ押しを手伝っているうちに遠くまで来てしまった。もう日が暮れる。「蜜柑(みかん)畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。『命さえ助かれば』」-。芥川龍之介の『トロツコ』である▼幼き冒険心、好奇心に […]

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 落語の「付き馬」の中に浅草寺の境内で鳩の餌を売るおばあさんが出てくる。おばあさんを久しぶりに見かけた男が、こんなことを言う。「あそこにおばあさんがいるでしょう。あのおばあさん、あたしが子どもの時から、あのまんま、あのお […]

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 出臼、肥料、三太丸屋。これが何を意味するかを即座に理解できる人は少ないだろう。出臼は父なる神のデウスであり、肥料はキリストを意味するフィリオ、三太丸屋はサンタマリア。今も残るカクレキリシタンの信徒が使った当て字だそうだ […]

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 ハナ肇とクレージーキャッツの「ドント節」(作詞・青島幸男、作曲・萩原哲晶)がヒットしたのは、高度成長期の真っただ中の一九六一(昭和三十六)年。<サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ>。植木等さんの底抜けに明るく、どこか […]

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 新渡戸稲造は『武士道』でこう述べている。<戦闘におけるフェア・プレイ。この野蛮さと…原始的な感覚のうちに、なんと豊かな倫理の萌芽(ほうが)があることだろうか>▼野蛮な世界から生まれるから<フェア・プレイ>は尊い。そんな […]

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街を歩いている男性の携帯に友だちから着信があった。近くにはいないはずなのに、現在地を言い当てられた。手の中に小銭があること、さらにその額、車をどこに止めたかまでも▼手品じみた出来事のタネは、警察が管理している街頭の監視カ […]

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交番を襲う。拳銃を奪う。奪った拳銃で銀行に押し入る。もちろん許せぬが理解はできる。拳銃を奪う。奪った拳銃で恨みのある人物を殺害する。これも理解はできる。どちらも犯罪だが、拳銃を奪う目的がある▼警官を刺殺し、拳銃を奪う。小 […]

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  アメリカン・ニューシネマを代表する映画「イージー・ライダー」の日本公開は一九七〇年だから、思い入れのある世代といえば、七十歳前後になっているか▼日本でも大ヒットし、あの頃の若者の下宿部屋にはハーレー・ダビッドソンにま […]

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 古道具屋の亭主が汚い太鼓を仕入れてくる。おかみさんはそんなものが売れるはずがないと叱る。「どうしておまえさんはものが分からないのかねえ」。ところがさる大名に三百両で売れる。落語「火焔太鼓(かえんだいこ)」の一場面。お金 […]

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 米大リーグの長い歴史の中には信じられない退場劇がある。一九八六年六月、サンディエゴ・パドレスのスティーブ・ボロス監督は試合開始前に退場させられた▼きっかけは前日の試合でパドレスの三塁走者が本塁ベースに触れているのに審判 […]

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