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ボクサー上がりという哲学者が古代ギリシャにいた。クレアンテスというストア学派の大家だ。もともと拳闘家で、立派な体格の人物と伝えられている。きわめて貧しく、昼間に哲学を学ぶかたわら、夜は庭園の水くみをして、生計を立てたそう […]

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 作家の向田邦子さんは一九六四年の東京五輪の開会式で聖火台に火がともるのを見て、「わけのわからない涙があふれてきた」と書いている。ちょうど家族から離れて暮らすことになったところで五輪と自分の独り立ちへの決意や感傷が涙とな […]

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 「そよとの風にも震えるが、どんな重荷も運んでいく」はカナダ、「道を作ってくれたら、どこまでだって行くよ」はペルー、「あれば…ただ同然。なくなれば、さあこれほど高価なものはない」はアラブ。日本には「切っても切っても切れな […]

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  短い一つの文章で物語を書く飯田茂実さんの「一文物語集」にこんなのがある。「熱病患者の額を冷やしたり、盗まれた宝石を包んだり、若い娘の夜の涙をぬぐったりしたかったのに、そのハンカチは古着屋の倉庫のなかで、いつまでも見栄 […]

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 かつての日本の流行歌には駅の発車ベルで恋仲の二人が泣く泣く別れるという内容の曲が多くあった。<惚(ほ)れていながら行く俺に旅をせかせるベルの音>(三橋美智也「哀愁列車」)、<別れ切ないプラットホーム ベルが鳴るベルが鳴 […]

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西から昇ったおひさまが東へ沈む-。「天才バカボン」の主題歌で放送開始は一九七一年なので、今でもすらすらと歌詞が出てくるという世代は六十歳近いか。八月二日は赤塚不二夫さんの祥月命日で没後十年という▼あの歌のおかげで、太陽は […]

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今から二千年以上前の古代インドの王朝でも、汚職は警戒すべき悪徳だったようだ。宰相カウティリヤの作とされる『実利論』に巧みな表現がある▼<水中を泳ぐ魚が水を飲んでも知られることがないように、職務に任じられた官吏が財を着服し […]

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小説を読んでもらうことは初対面の人に自分の車に乗ってもらうのと同じだ-。『アヒルと鴨のコインロッカー』などの作家、伊坂幸太郎さんがこんなことを語っている▼初対面の人を車に乗せることは難しい。だから、冒頭部分に知恵を絞る。 […]

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「信長燃ゆ」などの直木賞作家、安部龍太郎さんは若い時、井伏鱒二さんの自宅に押し掛けたことがあるそうだ。作品を尊敬する大作家に直接読んでもらい「力量を見定めていただきたい」。そう考えた▼わが力量をと携えたのだから自信の作だ […]

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 七月二十五日はかき氷の日だそうだ。7・2・5で「夏氷」の語呂合わせになるのと、一九三三年七月二十五日、山形県で当時最高気温となる四〇・八度を記録したことから、この日を選んでいるらしい▼その山形の記録。二〇〇七年まで七十 […]

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