2018年5月5日
『山月記』などの作家中島敦はかなりの子煩悩だった。パラオに単身で赴任した際は毎日のように愛情のこもった手紙を息子あてにつづっている▼『チビの歌』と題した短歌も残した。子育ての日々を<明方(あけがた)をわが床に来てもそくさ […]
2018年5月4日
一匹のクモの死が先週、欧米のメディアで取り上げられていた。オーストラリアで世界最高齢のトタテグモの一種が、四十三歳で死んだという。英紙テレグラフの電子版は<さようなら、十六番 「痛ましい」と科学者たち>と偉人の訃報のよ […]
2018年5月3日
地武太治部右衛門(ぢぶたぢぶえもん)さんが、殿様から使者の大役をおおせつかる。ところが、うっかり者で相手に伝えるべき口上をすべて忘れてしまう。落語の「粗忽(そこつ)の使者」である▼忘れたとあっては切腹するしかない。応対 […]
2018年5月2日
米映画「ショーシャンクの空に」の主人公が脱獄を計画したのは、その終身刑が冤罪(えんざい)によるものだったからである。「アルカトラズからの脱出」のクリント・イーストウッド演じる主人公の場合は悪らつ非道な刑務所長から逃れるた […]
2018年5月1日
その方の「十八番(おはこ)」として、どんな演目を選ぶべきか。二〇一四年の引退公演(大阪)は、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の「桜丸切腹の段」だった▼「これを語ってお客さんが泣きはらなんだら、太夫の […]
2018年4月30日
ウグイスの声は聞いたが、ホトトギスの声の時季にはまだ少し早いかもしれぬ。その鳴き声を言葉で表す聞きなしは「トウキョウトッキョキョカキョク」とか「テッペンカケタカ」▼言い伝えがある。ホトトギスはモズに何かの貸しがあるそう […]
2018年4月29日
時間を自由に行き来できるタイムマシンを一回だけ使えるとしたら…。この手のアンケートをすると、だいたい、未来よりも過去を選択する人が上回るそうだ▼その人の年齢にもよるか。子どもたちはタイムマシンで自分の将来を見たがり、反 […]
2018年4月28日
止まった時計というものがある。例えば長崎。原爆の爆風によって、十一時二分で止まったままの柱時計は、記憶が薄れることへの警鐘のように、原爆の悲惨を伝え続ける。東日本大震災をはじめ、大きな災害にも時計はあった。二度と動かな […]
2018年4月27日
元号を改める理由の一つに、「災異(さいい)改元」があった。現行の「一世一元制」になる明治の前には百回以上あった。災害や戦乱、疫病の流行などを機に改められ、そのうち七回ははしかの流行が理由だったという(石弘之著『感染症の世 […]
2018年4月26日
歌は二番から先がいい。そんな説がある。昭和の流行歌を愛した演出家の久世光彦(くぜてるひこ)さんによると、一番の歌詞は、テーマに沿って、状況や登場人物を描写しないといけない。心情に深く立ち入るのはその先だから「しびれる文 […]